今回は、DDR5メモリを高クロックで動作させる環境について考察してみます。目標クロックはDDR5-8000です。AMD対応のハイクロックを謳うメモリがあまり販売されていないせいか、AMD環境での情報は少ないようです。Ryzen 9000シリーズの発売が控えていますので、その前にメモリのハイクロック動作をみてみたいと思います。
AMD X670E/X670チップセットのマザーをみてみる
各マザーボードのメモリスペックを調べてみます。以下は2024年7月9日時点の内容です。価格帯は上から下まで幅広く選んでいます。
メーカー | 型番 | スペック記載 | QVL記載 |
ASUS | ROG CROSSHAIR X670E HERO | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASUS | ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASUS | PRIME X670E-PRO WIFI-CSM | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASUS | TUF GAMING X670E-PLUS | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASRock | X670E Taichi Carrara | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | X670E Taichi | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | X670E Steel Legend | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | X670E Pro RS | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
GIGABYTE | X670E AORUS XTREME (rev. 1.x) | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
GIGABYTE | X670 AORUS ELITE AX (rev. 1.3) | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
GIGABYTE | X670E AORUS PRO X | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
GIGABYTE | X670 GAMING X AX V2 (rev. 1.0) | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
MSI | MEG X670E ACE | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
MSI | MPG X670E CARBON WIFI | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7800 |
MSI | MAG X670E TOMAHAWK WIFI | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7800 |
MSI | X670E GAMING PLUS WIFI | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7800 |
あくまで表記上の製品スペックでの比較になりますが、ASUSとGIGABYTEのマザーはDDR5-8000を多くの製品で達成しています。ASRockのマザーはDDR5-7600~7800となっていますが、新しいBIOSバージョンでの検証がなかったので情報更新がされていないことも考えられます。
X670E/X670チップセットマザーであれば、DDR5-8000の動作が可能な製品が多くあることがわかります。なお、CPU別のQVLが掲載されている場合は、Ryzen 7000シリーズのほうが、Ryzen 8000シリーズよりも高いメモリクロックとなっています。つまりRyzen 7000シリーズのほうがメモリクロック耐性がいいことを示しています。メモリクロックはCPUによっても左右されることを知っておくべきでしょう。
AMD B650E/B650チップセットのマザーをみてみる
同じようにAMD B650E/B650チップセットのマザーのメモリスペックを見ていきます。
メーカー | 型番 | スペック記載 | QVL記載 |
ASUS | ROG STRIX B650E-F GAMING WIFI | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASUS | TUF GAMING B650-E WIFI | DDR5-8000+(OC) | ~DDR5-8000 |
ASUS | PRIME B650M-A II-CSM | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | B650E Taichi | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | B650E Steel Legend WiFi | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
ASRock | B650 Pro RS | DDR5-7200+(OC) | ~DDR5-7200 |
GIGABYTE | B650 AORUS ELITE X AX ICE | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
GIGABYTE | B650 EAGLE AX | DDR5-7600(OC) | ~DDR5-7600 |
GIGABYTE | B650M K (rev. 1.1) | DDR5-8000(OC) | ~DDR5-8000 |
MSI | MPG B650 CARBON WIFI | DDR5-7800+(OC) | ~DDR5-7800 |
MSI | MAG B650 TOMAHAWK WIFI | DDR5-7600+(OC) | ~DDR5-7600 |
MSI | PRO B650M-A WIFI | DDR5-7200+(OC) | ~DDR5-7200 |
B650E/B650マザーでも上位製品にはDDR5-8000をスペックとして謳っているマザーがあります。
上位製品と言ってもX670E/X670マザーの上位製品と比較すれば価格は抑えられています。B650E/B650マザーならより低価格でメモリハイクロックを扱う環境が構築できそうです。
一方、PWM周りがかなり簡素化されているモデルもあるため、下位製品の場合はメモリクロック耐性がどうしても低くなっています。メモリクロックを上げたい場合は、上位製品を使う必要があるでしょう。
実際にDDR5-8000で動くのか?
ASUS TUF GAMING X670E-PLUSとAMD Ryzen 5 8600Gを使って検証してみました。ハイエンドマザー&CPUであればメモリハイクロック耐性が高いですが、今回はなるべく求めやすい価格帯でDDR5-8000動作を実現できる環境を探っています。
検証機材構成
マザーボード | ASUS TUF GAMING X670E-PLUS (BIOS:2613 AMD AGESA FireRangerPI 1.1.7.0) |
CPU | AMD Ryzen 5 8600G |
メモリ | OCMEMORY OCM8000CL38D-32GBH (DDR5-8000 CL38 32GB) ※AMD EXPO/INTEL XMP対応 |
ASUS TUF GAMING X670E-PLUSはX670E/X670マザーの価格帯としては安い部類に入る製品です(実売3万円台)。BIOSは最新の2613を使用しています。AGESA 1.1.7.0はRyzen 9000シリーズに対応したバージョンでもあります。またRyzen 8000シリーズは初期BIOSでは対応していないため、マザーボードのBIOS Flashback機能を使い、CPU取り付け前にBIOS更新を行いました。Ryzen 8000シリーズ(またはRyzen 9000シリーズ)を使用される場合は注意してください。
CPUもマザーボードメーカーのQVLではRyzen 7000シリーズのほうがハイクロックメモリの動作確認がされていましたが、今回2024年2月に発売されたAPU、Ryzen 8000シリーズで試しています。このAPUでもDDR5-8000動作するのは、Computexでメモリメーカー数社で動作デモを行っていたのをヒントとしています。
まずはAMD EXPOプロファイルを読み込み、起動してみます。使用したOCMEMORY OCM8000CL38D-32GBHは、DDR5-8000スペックでAMD EXPOプロファイルに対応している数少ない製品です。そのためBIOSでEXPOプロファイルを読むことでメモリスペックのDDR5-8000の設定が可能です。
Advanced ModeのAi Overclock TunerでEXPO Iを選択し、EXPOからDDR5-8000のプロファイルを設定しました。デフォルトから、EXPO設定後の最初の起動には少し時間がかかりましたが、問題なく起動しました。CPU-Zでメモリクロックを見てみます。
「Memory」タブの「DRAM Frequency」が4000MHzとなっていますので、DDR5-8000で起動しています。タイミングはCL38-48-48-84 でEXPOでスペック通りの設定となっています。このあと、Cinebench R24(10分テスト)、FF XIV:黄金のレガシー ベンチ、CPU-Z Stress CPU Testなどを行ってみましたが、動作は問題ありませんでした。
今回、手探り状態で機種選定をしましたが、無事DDR5-8000動作させることができました。
意外とハードルが低いAMD環境でのDDR5-8000動作
AMD環境であれば比較的楽にメモリハイクロック環境が構築できそうです。INTEL環境よりもマザーボード選びはシビアではないことがわかりました。低価格帯のマザーでDDR5-7200~8000も実現できそうです。
今回、区切りのいいDDR5-8000というクロック設定にこだわってみましたが、PC全体からするとバランスのいいクロックで運用するほうがいいと思います。「DDR5-8000にすると少しパフォーマンスが落ちる」、「DDR5-7600~7800辺りがパフォーマンスがいい」というような検証事例もみかけますので、自身の利用環境によってパフォーマンスが出せるかの検証も必要です。
上の各マザーボードのスペックを見るとわかるように、DDR5-7200であれば多くのマザーボードが対応しています。マザーボードに合わせてハイクロックメモリでの運用はDDR5-7200~8000のレンジで検討してみてください。ただし、メモリ自体は結構熱くなりますので、常用の場合はエアフローのいい環境での使用をおすすめします。
Ryzen 9000シリーズの発売も間近に控えていて、メモリクロックでのパフォーマンスアップがどの程度あるか気になります。新しいCPUですので、B650E/B650チップセットでもより高いメモリクロックまでカバーされ、全体のパフォーマンスが改善されると考えられるので、期待したいと思います。
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