Snapdragon X EliteとSnapdragon X Plusは、マイクロソフトが2024年5月にリリースしたWindows PCの新カテゴリー「Copilot+ PC」に採用されたことで注目を集めるクアルコムの最新鋭SoC(System on Chip)です。
今回は、IntelでもAMDでもない第3の選択肢としてCopilot+ PCのローンチモデルに選ばれたSnapdragon Xについて紹介します。
強力なNPUを備えるSnapdragon X
クアルコムのSnapdragon Xは、クアルコムが独自開発したArmアーキテクチャベースのCPU「Oryon」、DirectX 12対応GPU「Adreno」、45TOPSの演算性能を備えたNPU「Hexagon」などを統合したSoCです。メモリコントローラはLPDDR5x-8448メモリの8チャネル動作(16bit×8チャネル)をサポートしており、最大で135GB/sの帯域幅を実現しました。
上位モデルのSnapdragon X Eliteは12コアCPUを搭載しており、CPUブーストクロックやGPU性能の違いにより4モデルがラインナップされています。一方、下位モデルのSnapdragon X PlusはCPUが10コアに減らされており、1モデルのみのラインナップとなっています。
Snapdragon Xが備える機能の中でも、特に注目の要素がNPUのHexagonです。
NPUとはNeural Processing Unitの略称で、AI処理に特化した演算ユニットを指します。Snapdragon XのHexagon NPUは、Copilot+ PCが求める40TOPSを上回る45TOPSもの演算性能を備えており、この要件をクリアできるNPUは2024年6月時点でクアルコム以外に存在していません。
ただ、NPUとしては強力な演算性能を有するHexagon NPUではありますが、GPUには遥かに高い演算性能を有する製品が存在しています。例えば、GeForce RTX 4060で242TOPS、GeForce RTX 4090は1,321TOPSに達します。NPUにGPUを代替するほどの性能は期待するべきではありません。
「x86」とは異なる「Arm」ベースのCPU
Snapdragon XのCPUコアはArmアーキテクチャを採用しており、これはWindows向けのIntelやAMDが採用するx86アーキテクチャとは互換性がありません。このため、Snapdragon Xを搭載したCopilot+ PCのOSには「Arm版Windows 11」が採用されています。
Arm版Windows 11では、Arm CPU向けに開発されたネイティブアプリケーションを利用できるほか、x86 CPU向けのアプリケーションをArm CPU上で動作させるための新型エミュレーター「Prism」が導入されており、従来よりも高いパフォーマンスでx86向けアプリケーションを動作させられるようになっています。
とはいえ、Intel/AMDのCPUを搭載するx86版Windows環境とArm版Windowsは別物ですので、必ずしも同じようにアプリを使えるわけではないという点に注意が必要です。Snapdragon Xを搭載したWindows PCの購入を検討されるさいは、使用したいアプリケーションのArm版Windows対応状況も合わせてチェックしておきましょう。