本日は、グラフィックカードの製品スペックに記載されている各項目について、それぞれの意味を簡単にご紹介いたします。グラフィックカード選びの際の参考にしていただければ幸いです。
GPU関連のスペック
GPU(Graphics Processing Unit)は、グラフィックカードの中核をなす演算装置で、グラフィックカードの性能はGPUのスペックによって決定されます。
▼搭載GPU(グラフィックスコア)
グラフィックカードが搭載するGPUを示すスペックで、「GeForce GTX 2080」や「Radeon RX 5700」など、NVIDIAやAMDのGPUメーカーの製品名で記載されます。
▼CUDAコア/ストリームプロセッサ
GPUコアが備える演算器の数で、同じ設計(アーキテクチャ)を採用するGPU同士であれば、演算器が多いほど高性能になります。演算器は、NVIDIA製品ではCUDAコア、AMD製品ではストリームプロセッサと呼ばれています。
・RTコア … 一部のNVIDIA製GPUに搭載されたレイトレーシング処理専用の演算器です。
・Tensorコア … 一部のNVIDIA製GPUに搭載された深層学習用の演算器です。
▼GPUコアクロック
GPUコアの動作周波数です。クロックは高いほど性能が向上するため、同じGPUを搭載したグラフィックカードなら、搭載GPUの動作クロックの高い方が高性能です。ただし、GPUコアが異なる場合、設計や演算器の違いによってクロック当たりの処理性能が異なるため、コアクロックの大小で性能を比較することはできません。
現代のGPUは動作状況に応じてGPUコアクロックを引き上げる「ブースト動作」に対応しており、GPUコアクロックには複数の数値が表記されている場合があり、AMDとNVIDIAでは意味が異なっています。
○NVIDIA製GPUのコアクロック
・ベースクロック … ブースト動作が行われていない場合の最大動作クロック
・ブーストクロック ... 標準的なゲームを実行中の平均動作クロック
○AMD製GPUのコアクロック
・ベースクロック … ブースト動作が行われていない場合の最大動作クロック
・ゲームクロック ... 標準的なゲームを実行中の平均動作クロック
・ブーストクロック ... ブースト動作時の最大動作クロック
ビデオメモリ関連のスペック
グラフィックカードには、GPU専用のメモリであるビデオメモリ(VRAM)が搭載されています。CPUにとってのメインメモリ同様、GPUが性能を発揮するためには、十分な速度と容量のビデオメモリが必要です。
▼メモリ規格(GDDR6/GDDR5/HBM2など)
グラフィックカードに搭載されたビデオメモリの規格です。GDDR6やGDDR5、HBM2などの種類があり、それぞれに技術的な特徴はあるのですが、重要なのはメモリクロックやメモリインターフェイスの仕様なので、規格そのものはそれほど重要ではありません。
▼メモリクロック(メモリスピード)
ビデオメモリのデータ転送レートを示すスペックで、ビデオメモリが1秒間にデータ転送を行える回数を「Hz」や「bps」単位で表記しています。メモリクロック(データ転送レート)が高いほど高速に動作するメモリであると言えます。
▼メモリインターフェイス(メモリバス幅)
ビデオメモリが1回のデータ転送で送れるデータ量を示すスペックで、単位には「bit」が用いられています。数字が大きいほど1回のデータ転送で送れるデータ量が増えるため、結果としてより高速なデータ転送が可能となります。
▼メモリ帯域幅
ビデオメモリが1秒間に転送できるデータ量を示すスペックで、単位には「GB/s」が用いられています。メモリ帯域幅は「メモリクロック」に「メモリインターフェイス」を掛けた数値であり、これがメモリの速度を示すスペックで、数字が大きい方が高性能なビデオメモリであると言えます。
▼メモリ容量
グラフィックカードに搭載されたビデオメモリの容量です。ビデオメモリは足りている限りは性能を容量が大きくても性能へのメリットはほぼありませんが、不足するとGPUは十分な性能を発揮できず致命的な性能低下を招くため、ビデオメモリ関連で最も重要なスペックであると言っても過言ではありません。
その他のスペック
グラフィックカードにはGPUやビデオメモリ以外にも、確認すべきスペックが複数存在します。映像出力端子や、スロットサイズなど、グラフィックカード自体の機能に関連するスペックがその典型例で、使う予定のPCケースやディスプレイとの組み合わせの可否がこれらのスペックで決定されます。
▼映像出力端子
グラフィックカードとディスプレイを接続するためのコネクタです。「HDMI」や「DisplayPort」などが搭載されており、これらはバージョンによって出力可能な画面解像度やフレームレートが異なる場合があります。
▼スロットサイズ
グラフィックカードが占有する拡張スロットの数です。2スロット占有であれば、グラフィックカードを接続した拡張スロットとの他、隣接する1スロット分はグラフィックカードが占有するため利用できなくなります。
▼カードサイズ
グラフィックカードの基板サイズです。特に重要なのは「長さ」で、ケース側の許容サイズ内であるか十分な確認が必要です。スロットサイズが記載されていないカードでは「厚さ」からスロットサイズを推定することもできます。見落としがちな点として、小型筐体では「高さ」が原因で搭載できない場合があるので注意しましょう。
▼電源コネクタ
消費電力の大きなGPUを搭載したグラフィックカードに電力を供給するための電源コネクタの仕様です。コネクタには「PCI-E 6ピン」と「PCI-E 8ピン」の2種類があり、複数のコネクタが必要な製品もあります。原則として全ての電源コネクタを接続しなければ、グラフィックカードは動作しません。