ある程度自作PCに慣れている方であれば、組みあがったPCに電源を入れた後、UEFI上でファンの回転数やCPU温度を確認するのは癖のようになっているかと思います。これは、クーラーの取り付けミスのような大きな失敗を防ぐという意味で有効な手段です。
しかし、そういったテクニックが身についている方が、Ryzen 7 1800Xや1700Xで組むと、想定外の数字に驚くことになるかもしれません。
これはRyzen 7 1800Xを搭載した際のUEFI画面ですが、この画像ではCPUのTemperature(温度)が64℃と表示されています。
UEFIメニューの表示中はある程度CPUに負荷が掛かっているため、Windows起動中のアイドル動作よりCPU温度が高くなるものですが、それを考慮しても64℃は高い数値です。Intelプラットフォームで同じような数字が表示されたら、CPUクーラーの設置ミスや、保護シールの剥がし忘れを疑うでしょう。
しかし、これはCPUクーラーの取り付けミスによるものではありません。
●実測値から「20℃」オフセットされているRyzen 7 1800X/1700XのCPU温度
AMDによると、現在発売されている3モデルのRyzen 7のうち、TDP 95Wモデルである1800Xと1700Xについては、CPUに内蔵された温度センサーの実測値に対して、「+20℃」オフセットした値を「CPU温度」として出力しているとのことです。つまり、先の画像のように64℃と表示されていれば、実測値は44℃ということになります。
AMD Ryzen Community Update(Temperature Reporting)
https://community.amd.com/community/gaming/blog/2017/03/13/amd-ryzen-community-update
なぜ、このようなオフセットが行われているのかという点については、TDP 95WモデルとTDP 65Wモデルで異なっているCPUの最大動作温度に対して、ファン制御やCPU保護機能の基準となる「CPU温度」の最大値が同じになるようにするためであるとされています。
やや分かりにくいですが、あるCPUでは80℃以下、別のCPUでは100℃以下といった具合で、超えてはならない「CPU温度」がバラバラになるより、「CPU温度」の限界値を全CPUで統一していた方が、CPUクーラーのファン回転数を制御するための基準としては扱いやすいという考え方のようです。
ただ、現状ではこの情報がマザーボードメーカーのファン制御に適切に反映されていない感があります。例えば、ASUSの一部製品ではCPU温度が75℃を超えるとファンコントロールを無効化するセーフティーが効いていますが、これはRyzen 7のオフセットされたCPU温度制御からすると安全マージンを取りすぎています。今後のアップデートでより適切な数値に対応されることに期待しましょう。
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