メモリをアップグレードする場合、既存のメモリに新しいメモリを追加する「増設」か、既存のメモリを取り外して新しいメモリを搭載する「交換」、いずれかの手法を選ぶことになります。
今回は、メモリ容量をアップグレードする手段として、メモリを「増設」する際のポイントをご紹介します。
メモリの増設を行う場合、新たに用意するメモリのスペックのうち、容量以外のスペックは既に搭載しているメモリと揃えるべきです。
メモリクロックは低い方に合わせて設定する必要があるので、既存のメモリより低いものを選べば性能が低下し、高いものを選んでも性能は上がりません。メモリ電圧は高い方に合わせる必要があるので、場合によっては製品保証外の動作となる可能性があります。
容量については既存のメモリと合わせる必要はありませんが、マザーボードによってはサポートしていないメモリ容量が存在する場合があります。DDR4時代初期のマザーボードなどでは、1枚あたり16GBの容量を持つメモリをサポートしていない製品が少なからず存在しており、搭載してもメモリを正しく認識しないことがあります。
あらかじめ、マザーボードのスペック表やQVL(Qualified Vendor List)を確認することをお勧めします。
●「増設」の問題点とは
増設の大きな問題点として、増設を行った結果メモリがスペック通りに動作しない場合があるという点です。
一部のメーカー製PC向けに販売されている「増設メモリ用メモリ」を除き、多くのメモリの製品スペックは製品を単体で利用した際に保証されているもので、複数の製品を組み合わせて利用することになる「増設」では動作保証が適用されません。
同じJEDEC標準規格に準拠したメモリ同士なら問題は比較的起こりにくいのですが、高クロックや低レイテンシを実現するオーバークロックメモリでは特に組み合わせの問題は生じやすく、2枚1組のメモリキットに、同じ型番のメモリキットを増設して4枚で使おうとしたところ、安定した動作が得られないというケースが珍しくありません。このような場合、メーカーの動作保証の範囲外となってしまいます。
●うまく行けば低コストながらリスクもあるのが「増設」
メモリの増設は、うまく行けば安くメモリの容量を増やすことができる一方、多くの場合でメーカーの動作保証範囲外での運用となり、うまく動かなかった場合、自己責任で対処することになります。
増設特有の問題を回避するには「交換」を選択するのも良いでしょう。特に、複数製品の組み合わせで問題が起こりやすいオーバークロックメモリをお使いの場合には、増設ではなく交換を強くおすすめします。