AMDのRyzenを搭載したPCにおいて、ファームウェアTPM(fTPM)を有効にしたWindows環境で、一時的なパフォーマンス低下が発生する問題があることが話題になっています。今回はこの問題と、その対処方法について解説いたします。
fTPM有効時のRyzen環境で発生するパフォーマンス低下
CPUとマザーボードでTPM機能を提供する「fTPM」を有効にしたAMDのRyzen環境では、SPIフラッシュ上でfTPM関連のメモリトランザクションが断続的に発生し、トランザクションが完了するまでの間、システム上では「スタッター」と呼ばれるカクツキなどが生じる場合があるようです。
この現象の発生の頻度やタイミングについてはランダムで、発生時には数秒程度のカクツキやそれに伴う操作性の悪化が生じますが、今のところシステムの安定性に影響を与えてブルースクリーンが生じるような不具合は生じていないようです。
5月以降に提供予定のAGESA 1207以降で修正予定
AMDは、この問題に対処するファームウェア「AGESA 1207」を5月以降に提供する予定で、ユーザーがこのアップデートを利用するには、AGESA 1207を導入したBIOSにアップデートする必要があります(※一部メーカーでAGESA 1207導入バージョンが提供開始されています)。
▼AMDによる不具合情報
Intermittent System Stutter Experienced with fTPM Enabled on Windows 10 and 11
https://www.amd.com/ja/support/kb/faq/pa-410
今のところ、fTPM有効時のパフォーマンス低下問題は致命的ではないため、実際に使用していて不具合を感じていなければAGESA 1207の提供を待つべきですが、既に不具合に遭遇している場合には、fTPMの利用を中断して、専用のTPMモジュールを利用するハードウェアTPM「dTPM」への切り替えがAMDから提案されています。
Windows 10環境でBitLockerのようなTPMを必要とする機能を使っていない場合は、fTPMを無効化することができますが、TPM 2.0の利用が必須となっているWindows 11やBitLockerを利用している場合はfTPMの無効化は推奨されません。
また、dTPMの利用には安価とは言い難いTPMモジュールと、それを接続するためのポートをマザーボードが備えている必要があります。もちろん、fTPMからdTPMへの切り替え時には、事前にBitLockerを無効化しておく必要もあります。
BitLockerの事前無効化はBIOS更新でも必要ですが、fTPMをdTPMで代用する方法はそれなりにコストが掛かるため、ご自身の環境での不具合発生頻度と、それによって被る損失を十分に考慮した上で、AGESA 1207の提供を待つべきか否かをご検討ください。