今回はCPUクーラーを「トップフロー型」「サイドフロー型」「オールインワン水冷」の3タイプ別に分類し、それぞれの特徴について紹介いたします。
空冷CPUクーラーの基本形「トップフロー型クーラー」
トップフロー型のCPUクーラーとは、冷却ファンをCPUと水平に配置して、CPUに向かって吹き降ろすようなエアフローで冷却を行う空冷CPUクーラーです。
いくつかの例外はありますが、IntelやAMDがCPUに同梱する純正クーラーのほとんどはトップフロー型であり、空冷CPUクーラーの基本的な形状です。
トップフロー型のメリットとしてよく上げられるのは、CPUソケット周辺に吹き降ろす形でエアフローを発生させるため、そこに配置されたコンポーネントを冷却できるというものがあります。特にCPUメーカーの純正クーラーでは、高温になりやすいVRMを冷却するのに重要な役割を果たしています。
▲トップフローのNoctua NH-L9i-17xx
ただし、トップフロー型CPUクーラーが周辺コンポーネントの冷却を行うためには、それなりの速度でファンを回す必要があるため静粛性が犠牲になります。このため、純正クーラー以外では「CPUクーラーの高さを抑えられる」というもう一つのメリットを生かした設計の製品が主流となっています。
Mini-ITX規格のコンパクトなケースや、スリムタワーのようにCPUクーラーの高さが制限されるPCケースを利用する場合はトップフロー型が有力な選択肢となるでしょう。
冷却性能を重視する空冷CPUクーラーの主流「サイドフロー型」
サイドフロー型のCPUクーラーとは、冷却ファンをCPUに対して垂直に配置して、CPUに対して水平方向のエアフローを構築する空冷CPUクーラーです。
CPUに吹き付けるようなトップフロー型より、ケース内部でスムーズなエアフローを構築できることと、ヒートパイプを効率的に用いた大型ヒートシンクを実現できるため、冷却性能を重視したCPUクーラーの多くがサイドフロー型の設計を採用しています。
CPUソケット周辺コンポーネントの冷却が課題と思われがちですが、ケース全体でスムーズなエアフローを構築できることもあり、低速ファンを搭載したトップフロー型よりも周辺コンポーネントの温度を低く保てる場合もあります。
弱点としては、ファンをCPUに対して垂直に配置する都合上、少なくとも搭載ファンのサイズ以上の高さが必要になる点です。120mm以上のファンを搭載する製品はタワー型ケースなどでなければ搭載できません。また、後述するオールインワン水冷には、サイドフロー型のハイエンド製品を上回る冷却性能を実現した製品も存在します。
空冷CPUクーラーの中では高い冷却性能を実現した製品が多い点と、コストパフォーマンスやファン故障以外では長期に渡って冷却性能を維持できてる点などがサイドフロー型CPUクーラーを選ぶ際のポイントとなるでしょう。
完成品として入手できる水冷クーラー「オールインワン水冷」
オールインワン水冷CPUクーラーは、冷却液が充填された状態で販売されている水冷クーラーのことで、簡易水冷などと呼ばれる場合もあります。
オールインワン水冷クーラーは空冷CPUクーラーと違い、重量物であるラジエーターをケースのシャーシに固定するためCPUソケット周辺への荷重負荷が少ないこともあり、空冷CPUクーラーよりも大型のラジエーターを用いた冷却が可能で、280mmや360mmサイズのラジエーターを搭載した製品ではサイドフロー型空冷CPUクーラーのハイエンド製品を上回る冷却性能を実現している製品も存在します。
完成品として購入できるCPUクーラーの中でも、冷却性能的にはベストな選択肢ともなり得るオールインワン水冷ですが、その性能はラジエーターのサイズに依存している部分が大きく、空冷CPUクーラーを超える冷却性能を得るためには、大型ラジエーターが搭載できる大型ケースを用意する必要があります。
また、初期の頃よりずいぶん信頼性が向上したとは言え、水漏れやポンプ故障といったリスクは依然として存在しています。信頼のおけるメーカーの高性能オールインワン水冷はかなり高価であるというのもデメリットのひとつと言えるでしょう。
近年のCPUが高発熱化していることもあり、オールインワン水冷は今回紹介した3タイプの中でも特に注目を集めているCPUクーラーです。PCケース側でも大型ラジエーターを搭載可能なように設計された製品が多数リリースされているので、特に冷却性能を重視される方は280mm以上のオールインワン水冷を検討されることをおすすめします。