パーツの選び方

Ryzen 7000シリーズのCPUクーラー選び

 今回は、Ryzen 7000シリーズ向けにCPUクーラーを選ぶさいのポイントご紹介します。

「冷やしきる」のは難しいRyzen 7000シリーズ

 Ryzen 7000シリーズは、電力供給能力が強化されたSocket AM5の採用によって、より大電力を消費するブースト動作を採用しています。これにより、上位のRyzen 9はTDPが170Wに引き上げられたうえ、電力リミットのPPTは230Wに設定されています。

 この大電力を消費する仕様に加え、チップレットアーキテクチャを採用するRyzen 7000シリーズのCPUコアは、CCDと呼ばれる小さなチップレットに集約されているため熱密度が高く、全てのコアを最大限に活用する場面では高性能なCPUクーラーを用いても、CPU温度が温度リミットの95℃に達するのを防ぐのは難しいのが現実です。

 現代のCPUにおける温度リミットは安全に動作可能な最大温度として設定されているので、温度リミットに達することでCPUがダメージを負う心配はないのですが、サーマルスロットリングが作動するためCPUクロックは温度リミット値を維持できるレベルにまで低下します。

 Ryzen 7000シリーズ向けのCPUクーラー選びにおいては、最大負荷時にCPU温度を温度リミットよりも低く保てるという点より、必要な場面でどれだけCPUのクロックを高く保てるのかに注目してCPUクーラーを選ぶことが、より重要になってきます。

各CPUの電力指標とAMDの推奨クーラー

 Ryzen 7000シリーズのCPUクーラーを選ぶさいの手がかりとなるのが、実質的な電力指標であるTDPと電力リミットのPPTです。

 AMDはTDPをベースクロック時の最大発熱(=最大消費電力)としているので、Ryzen 7000シリーズ向けCPUクーラーには最低限TDP値を冷却できる性能が求められます。

 電力リミットのPPTは、ブースト動作中の最大消費電力を制限するリミット値であるため、ブースト動作中の発熱を処理するためには、この数値相当の発熱を処理できるCPUクーラーを選ぶ必要があります。

 これらの仕様を踏まえた上で、AMDはRyzen 7000シリーズの推奨クーラーとして、TDP 105Wモデルに対してミドルタワーサイズのサイドフロー型CPUクーラー、TDP 170Wモデルには240mm以上のオールインワン水冷クーラーを挙げています。

Ryzen 7000 cooler

 AMDの推奨クーラーを使用したとしても、ブースト動作中のCPU温度をリミット値未満に保てるという訳ではありませんが、動画のエンコードやCGレンダリング程度の負荷で、ベースクロックを割り込むほど深刻なサーマルスロットリングが生じることはないでしょう。

 温度リミット未満に固執すると、CPUクーラーに掛かるコストが非常に大きなものとなってしまうので、AMDの推奨クーラーや電力指標を参考にしつつ、必要十分な冷却性能が得られるCPUクーラーを検討することが重要です。

独自バックプレートを用いるSocket AM4対応クーラーは利用不可

 Ryzen 7000シリーズが新たに採用したSocket AM5は、従来のSocket AM4対応CPUクーラーが流用可能であるとされていますが、全てのクーラーが利用できるわけではありません。

 Socket AM5で利用できるのは、標準の樹脂製マウンタに引っ掛けて固定するタイプのCPUクーラーと、純正バックプレートを利用して取り付けるタイプのCPUクーラーです。

 逆に、独自のバックプレートを使って固定するものや、マザーボード裏側からねじ止めするようなリテンションキットを採用したSocket AM4対応CPUクーラーは利用できません。

 Socket AM5対応をアピールしている製品を選ぶのが確実ですが、そうでない場合はCPUクーラーがSocket AM4に対してどのような固定方法を採用しているのかをしっかり確認するようにしましょう。

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