メモリの知識 雑談

Computex 2024に見るメモリ事情

先週、台北にてComputex 2024が行われました。
そちらに足を運びましたので、メモリ情報などをお届けします。

※今回の記事は私的考察も入っていますので、「まあ、そんな話もある」くらいに読んでください。

近々出てくる可能性があるメモリ

当店でメインで扱っているG.Skillでは、ハイクロックメモリを多くデモしていました。Intel環境では現在DDR5-8400まで製品化されているので、その上のクロックとして、DDR5-9000が動いていました。DDR5-8000以上となると、マザーボードが2スロットのものでないと動作しないので、ハイクロックで使いたい方限定になってきますが、現状よりもう少しは上のクロックが発売される可能性はあります。また今のDRAMだと16GBより、24GBで使われているチップのほうが耐性がよさそうです。

今回のComputexではIntelの次世代プラットフォームのマザーボードがちらほらとみられましたが、発売はまだちょっと先なので、次の新製品としてはAMD向けのハイクロック製品でしょうか。Ryzen 8000Gシリーズ環境でのDDR5-8000オーバーのデモが多くありました。7月に発売予定のRyzen 9000シリーズでメモリクロックを上げた時どれくらいパフォーマンスの恩恵があるのか、気になるところです。現行マザーでもAGESA1.1.7.0以上にすれば、メモリクロックも上げられる余裕がありそうです。

CAMM2はデスクトップにも普及するのか?

CAMM2など新技術の展示もありましたが、各メーカー共に「これも作れますよ」というアピールのための展示レベルでした。デスクトップ用のCAMM2に関してはどんな製品が出てくるかは決まってない感じで、少なくとも現在のLDIMMが早々に置き換わるようなことはないでしょう。SODIMMは一部CAMM2に置き換わっていく流れはありそうです。

各マザーメーカー、メモリメーカーはCAMM2 DDR5の展示、動作デモを行っていました。G.Skillのデモを見る限り、DDR5-7800 1.45Vで動作しており、「デスクトップでCAMM2使ってここまでクロックがあげられますよ。」という例のようです。現状だと風当てて冷やさないとダメってことみたいですが。

ASUSのROGブースではDDR5-8000でのデモが行われていました。ASUSでは省スペース、ハイクロック、冷却方法のバリエーション、エアフロー、CPUクーラーとの干渉など、ハイエンド領域でCAMM2がLDIMMより有利な点を挙げていました。Computexは現状のマザーのレイアウトでのCAMM2デモでしたが、「メモリのスペースこんなにいらんよね」「空きスペースは、あーしてこーしてそうしよう」とかなって新レイアウト設計のマザーとか出てくるのでしょうか?

メモリメーカーってなに?

ここからはあまり一般的でない裏話的な内容ですので、メモリ好きな方のみお付き合いください。
Computexに出展しているメモリメーカーを大別すると以下のようになります。

  • 日本に代理店があり自社ブランドを販売しているメーカー
  • 日本に代理店はなく、主に日本以外で販売しているメーカー
  • OEMがメインで自社ブランド製品は販売してないメーカー

まず、①は日本でも知られているメモリメーカーです。G.Skill、CORSAIR、Kingston、TEAM、ADATA、GeIL、V-Colorなどです。アメリカの会社も実際は台湾(または中国)の工場で生産されたものを販売しています。工場は、自社で持っている場合と、OEMとして他社に依頼している場合、また両方を使い分けている場合があります。またこの中にはメインは他のパーツのブランドですが、メモリも自社ブランドで出しているメーカーもあります。GIGABYTEのAOURAや、Thermaltakeなどです。

②のメーカーは日本ではあまり知られていません。それぞれのメーカーで得意なエリアが異なっていたりします。中東、インド、ロシア、南米など様々なエリアを販売先としています。日本ではDDR5が主流となってきていますが、他のエリアではまだDDR3、DDR4を主に使っているところもあるため、DDR5はあまり生産していない会社も多くあります。一部メーカーは日本はAmazonでのみ販売している場合があります。

③はメーカー名が表に出てくることはほぼありません。以前は台湾の会社がほとんどでしたが、今年は中国の会社が増えたという印象です。こういった会社はComputexには出展していないこともあります。これらのメーカーが①のOEMを請け負ったり、組み込み用のものを作っています。

それぞれのメーカーで販売先、ターゲットが異なっています。いろいろ見ることができるのがComputexのいいところです。

▲ICのソーティングマシンを会場に持ち込んでデモしていたメーカーも

DRAMについて

DDR5のチップ事情についてです。
現在販売されているDDR5に使われているDRAMチップは主に以下のDRAMメーカーによるものです。

  • Sk hynix
  • Micron (SpecTek)
  • Samsung

Computexの出展メモリメーカーに使用しているDRAMを聞くと、ほぼSk hynixかSpecTekという答えでした。SpecTekとはMicronのサブブランド名です。DDR5世代はMicronオリジナルDRAMが台湾のメモリメーカーに入ってくることは少ないようです。

現在出回っているDDR5 DRAMはメモリクロック特性がかなり明確なため、クロックにより使い分けがされています。

  • DDR5-4800~5600 → Micron (SpecTek)
  • DDR5-5600~6000 → Samsung、Hynix
  • DDR5-6000~ → Sk hynix

DDR5-6000が境界となっていて、下のクロックは主にSpecTek、上はSk hynixが使われます。オーバークロック領域はSk hynix一択となっています。Samsung、SpecTekはギリギリDDR5-6000までなら採れるようです。Sk hynixは全領域カバーできるので、スタンダードのクロックでも使われています。

DDR5 DRAMの価格は

Sk hynix >Samsung > SpecTek

の順で、メモリクロックと価格により使い分けがされています。今、安いDDR5はSpecTekが使われている可能性が高いです。SpecTekが悪いわけではありませんが、グレードが多いため一部訳アリ品もあるという話も聞きました。訳アリ品をどう料理するかはメモリメーカーの腕次第でしょう。ちょっと曲がった規格外となるキュウリや大根も使いようによっては美味しくいただけます。これはDRAMも同じです。

DDR4では一部中国メーカーで中国のCXMTのDRAMを使用している製品があるようです。どんなチップなのかちょっと気になるものの、現時点で価格的なメリットはなく、あえてCXMTのDRAMを選ぶ理由はないように思いました。

▲Sk hynix本家より大きなDRAMパネル展示していたメーカー

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