IntelやAMDのCPUには、「ブースト技術」に対応した製品が数多く登場しています。今回は、このブースト技術がどのようなものなのか紹介します。
マルチコアCPUの性能を高める「ブースト技術」
IntelやAMDがCPUに採用するブースト技術とは、特定の条件下でCPUの動作クロックを定格クロックよりも高い数値に引き上げる技術です。CPUの処理能力は動作クロックとともに向上するため、ブースト動作中のCPUは定格よりも高い性能を発揮します。
CPUが備えるコア数が増加した現在、全てのコアをフル稼働させた際の消費電力や発熱を基準に最大動作クロックを決定すると、コア数の多い製品ほど1コアあたりの性能が低くなってしまいます。このため、フル稼働時の動作限界を基準に定格クロックを定める一方で、CPUが動作限界に達する状況以外ではブースト動作によって性能を底上げしているという訳です。
Intelのブースト技術「Turbo Boost」
Intel製CPUに採用されているブースト技術の中で、現在ベースとなっているのが「Turbo Boost 2.0」です。
Turbo Boost 2.0では、持続的な電力リミット「PL1」、時間制限付き電力リミット「PL2」、PL2の時間制限「Tau」という3つの電力リミットと、最大動作温度、最大電流値などのモニタリングデータに基づき、CPUの動作クロックを稼働コア数ごとに設定されたブーストクロックの範囲内で引き上げます。
電力リミットのパラメーターについては、マザーボード毎に異なる数値が設定されており、オート設定でどのようなブースト動作になるのかはマザーボードによって異なります。手動で設定を変更することも可能ですが、それはオーバークロック同様に製品保証外のチューニングとなりますのでご注意ください。
この他、Intel製品では、特定コアのみを更に高クロック動作させるTurbo Boost Max 3.0や、動作温度が低い時にCPUクロックを高めるThermal Velocity Boostに対応した製品も登場しています。
AMDのブースト技術「Precision Boost」
AMDが現在展開しているRyzen 5000シリーズや第3世代Ryzenには「Precision Boost 2」というブースト機能が搭載されています。
Precision Boost 2では、温度リミット、電力リミット(PPT)、電流リミットの「TDC」と「EDC」に代表されるパラメーターを基準に、複数のモニタリングデータからCPUのブースト動作を細かくチューニングしています。
マザーボード毎に電力リミットが異なるIntelとは異なり、AMD製CPUのリミット値は原則として一定の数値が適用されます。ただし、その数値はTDP値とは異なるものとなっており、TDP 105WのRyzen 9 5950Xであれば、電力リミットのPPTは標準で142Wに設定されており、他のリミットで制限されなければ、ブースト動作中は最大142Wで動作することになります。
Precision Boost 2の他に、XFR2というブースト機能も用意されており、これによってCPUが十分に低い温度で動作している際には、Precision Boost 2のブースト動作から更にCPUクロックを高めて性能を向上させることができます。