パーツの選び方

見た目通りに動作しない拡張スロットの罠

 ほとんどのPCパーツの接続先となるマザーボードは、PCの拡張性を左右する最重要パーツのひとつです。そんなマザーボード選びの際、思わぬ失敗のもとになりがちな拡張スロットの罠についてご紹介します。

●見た目で判断できないPCI Expressスロットのレーン数
 マザーボードにはグラフィックカードをはじめとする拡張カードを接続するため、一般に拡張スロットと呼ばれるスロットが実装されています。近年主流の拡張スロットはPCI Expressスロットで、その名の通りPCI Expressバスでパーツと接続します。

 PCI Expressバスは複数の伝送路を束ねて通信することにより転送帯域を広くとることができるバスで、基本となる1レーンから最大で32レーンでの接続が規格化されています。PCI Expressスロットは最大で16レーン接続できる「PCI Express x16 スロット」が用意されている他、x1、x4、x8などのスロットも存在しています。

 現在のマザーボードの多くは、PCI Expressスロットとして「x16 スロット」と「x1 スロット」を実装しています。ハイエンド製品になると、全ての拡張スロットがx16 スロットという製品も存在します。

 さて、何も知らないと「x16 スロットなら16レーンでの接続に対応しているのだろう」と思ってしまいがちなのですが、現実にはマザーボード上に実装されたx16 スロットは、最大レーン数が4レーンだったり8レーン、場合によっては1レーンという場合もあります。

 このため、スロットの形状で接続レーン数の算段をしていると、実際に拡張カードを接続したとき、想定していたよりも少ないレーン数で接続されて十分な性能を発揮できなかったり、場合によってはそもそも動作しないといいことも起こり得るのです。

●PCI Expressスロットの接続レーン数はメーカーサイトで要チェック
 なぜこのような仕様になっているのかというと、マザーボード上のPCI Expressスロットは、CPUやチップセットから提供されるPCI Expressバスを利用しているのですが、CPUやチップセットのPCI Express レーンは有限なため、 使用状況に応じてレーンを割り振っているためです。
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  ▲ASRockのページより

 マザーボードが備えているPCI Expressスロットが、実際に何レーンで接続できるのかという情報は、マザーボードのスペック一覧やマニュアルに記載されており、メーカーのウェブサイトを閲覧することで、購入前の段階で確認できます。

 あらかじめ接続可能なレーン数を把握することで、PCI Express スロットのレーン数が実は不足していたという失敗は防ぐことができます。

●スロット形状と接続レーン数は無関係
 ややこしく感じられるかもしれませんが、PCI Express スロット側のx16やx4などという数字は、接続可能なレーン数とは無関係で、接続する拡張カードのコネクタ形状への対応を示すものです。

 PCI Expressバスを利用する機器は、x16対応機器でもレーン数が足りなければx8などレーン数を減らして接続することに対応しています。レーン数を減らせば転送帯域も狭まってしまい、状況によっては性能の低下が発生するかもしれませんが、動作は可能なのです。

 しかし、PCI Expressスロットのx16 スロットとx8 スロットは長さが異なっており、グラフィックカードをx8 スロットに接続しようとしても、物理的に搭載できないという問題が発生します。

 このため、現在のマザーボードでは、もっともコネクタが大きいx16対応拡張カードが接続可能で、なおかつx8やx4、x1接続の拡張カードも搭載可能なx16 スロットが多用されているという訳です。

 最近はPCI Expressスロットに接続するタイプの高速なSSDも登場しており、これらが十分な性能を発揮するためには、適切なレーン数で接続することが必要不可欠です。マザーボード選びの際、くれぐれもスロットの形状だけで判断せず、メーカーサイトをチェックして使用予定のスロットが十分なレーン数で接続できるのか確認するようにしましょう。


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