自作PCの知識

サーマルグリスの材料ってなに?

 今回は自作PCでよく使われる「サーマルグリス」について材料の視点から紹介します。

サーマルグリスとは

 サーマルグリスは、CPUやGPUと言った発熱源と放熱器の間を熱的に接合する「サーマルインターフェイスマテリアル(TIM)」の一種で、オイルに増ちょう剤や添加剤を混合して製造されています。

 かつてはオイルにシリコンオイルを用いることが多かったため「シリコングリス」と呼ばれたこともありますが、近年は非シリコン系オイルを用いたグリスが多いため、サーマルグリスと呼ばれるようになりました。

サーマルグリスの性能を左右する材料

 サーマルグリスの性能や性質は、配合されている材料やその比率によって変化します。熱伝導の補助が目的のサーマルグリスでは添加剤に熱伝導性を高める素材を配合しており、添加した素材の名前を冠した「銀グリス」や「ダイヤモンドグリス」などが知られています。
アイネックスナノダイヤモンドグリス JP-DX1
▲アイネックスナノダイヤモンドグリス JP-DX1

 サーマルグリスの性能指標として最も知られているのは「熱伝導率」ですが、グリスの厚みが増えたり、接触面積が減るとTIMとしての「熱抵抗値」が上昇してしまうため、グリスのちょう度(かたさ)も重要です。

 熱伝導率を犠牲にしてでも柔らかく伸びやすく配合されたグリスもあれば、溶剤を添加することで一時的な柔軟性を確保しているグリスもあります。後者の場合、溶剤が揮発するまで本来の性能を発揮できないとしている製品もあります。

 また、サーマルグリスの素材は「耐久性」や「電気抵抗」にも影響を及ぼしますが、一般的なサーマルグリスは、オイルが揮発して固化したあとも熱伝導を維持できることと、ショートを起こさない程度に高い電気抵抗が得られるように配合されています。

PC向けに配合されたサーマルグリスを使いましょう

 サーマルグリスの性能や性質を左右する材料や配合比率ですが、これらはメーカーの企業秘密として公開されておらず、また公開されていたとしてもそれらから性質や性能を推察することは困難です。

 また、公表されているスペックも熱伝導率や内容量以外は明らかでない製品も多く、サーマルグリスは製品情報から読み取るのが難しい製品の一つです。性能や性質、その使用感などはメディアやユーザーのレビューを参照して探ることになるでしょう。

 ただ、ここで一つ覚えておくべきことは、サーマルグリスはメーカーが使用目的に適した材料を選定して作られているという点です。

 PCのTIMとしての利用を前提としていないグリスでは、長期的に性能を維持できなかったり、揮発したオイルや材料が電子部品に悪影響を及ぼす場合もあります。異なる用途のグリスを代用せず、PC専用のサーマルグリスを使うようにしましょう。

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