今回は、小型の電源ユニットである「SFX電源」と、その使い方について紹介いたします。
SFX規格に対応した小型電源ユニット
SFX電源は、microATX規格向けに策定された省スペース電源ユニット規格で、現在販売されているものの筐体サイズは基本的に「125×100×63.5mm」となっています。
SFX電源のサイズは、自作PCで一般的なATX電源より小さいため、変換ブラケットを用いることでATX電源対応PCケースにSFX電源を組み込むことは可能ですが、逆にSFX電源にのみ対応するPCケースにATX電源を搭載することはできません。
また、SFX電源の派生規格として「SFX-L」が存在しており、これはSFX電源の奥行きを30mmほど延長(125×130×63.5mm)することによって、電源ユニット本体に大口径ファンの搭載を可能にした製品です。
省スペースPCに組み込んでこそメリットの得られるSFX電源
microATX規格に対応した省スペースPCでの利用を前提に規格が策定されたSFX電源は、省スペースPCに組み込んでこそメリットが得られる電源ユニットです。
SFX電源にのみ対応したPCケースではSFX電源の利用が不可避なので選択の余地はありませんが、近年の小型PCケースは強力なビデオカードの搭載を想定してATX電源を搭載できる製品が増えています。しかし、実際にATX電源を組み込むと配線スペースの確保が困難になって組み込み難易度が高くなるケースが多くあります。
そういったケースに変換ブラケットを用いてSFX電源を組み込むと、ATX電源を搭載するために確保されていたスペースの一部を配線スペースとして活用できるようになるので、より組み立てやすくなる場合があります。また最近では800Wを超える大容量のSFX電源も発売されていて、小型PCで上位ビデオカードを使うことができるようになっています。
▲CoolerMasterの850WのSFX電源
通常のタワー型ケースでの利用には不適
省スペースPCでは使い勝手の良いSFX電源ですが、変換ブラケットを用いてATX電源の代わりにできるとは言え、一般的なタワー型PCケースでの利用には適しません。
その主な理由としては、「容量単価の高さ」と「ケーブルの仕様」にあります。
SFX電源はより大型のATX電源と比べ電源容量を増やすのが難しく、結果として同グレードのATX電源より容量単価が高額になっています。
また、小型PCでの利用を前提に設計されているため、付属する電源ケーブルの長さはかなり短く、コネクタの数も少なくなっています。パーツ間の距離や搭載できるパーツの数も限られる小型ケースでの利用では問題がなくても、タワー型ケースに組み込んだパーツに配線するには十分とは言えません。
ほかにも、小型化のため冷却ファンの口径を小さくせざるを得ないため、ファンの回転数を高く設定して冷却を行うSFX電源も多く、動作ノイズの面でもATX電源より不利な製品が少なくありません。
派生規格であるSFX-L電源はこの点を大口径ファンの搭載で改善していますが、ATX電源の方がより安価で静粛性も確保した製品が多いので、搭載スペースに余裕があるケースでSFX電源を使うのはおすすめできません。
SFX電源は、その省スペース性をうまく活用すれば、PCの組み立てをより快適に行うことのできる可能性を秘めた電源ユニットです。小型PCの自作を検討されている方で、ATX電源を搭載した場合の制約に悩んでいるのであれば、SFX電源をうまく利用する方法がないか検討してみてはいかがでしょう。