メインメモリの容量不足はPCのパフォーマンスを大きく低下させる要因のひとつです。今回はメモリ容量に不足を感じるようになった方向けに、メモリの増設や交換を行う際にチェックすべきポイントを紹介します。
マザーボードが備えるメモリスロットの仕様をチェック
メインメモリの増設や交換を行う場合、まずチェックすべきなのはお使いのマザーボードが備えるメモリスロットの仕様です。
マザーボードの製品仕様にはメモリスロットの仕様が記載されており、DDR5やDDR4といった対応メモリ規格やメモリクロック、メモリスロットの本数などが確認できます。増設や交換するメモリを購入する際は、このメモリスロットの規格に合致する製品を選ばなければなりません。このブログでも何度か紹介しているとおり、DDR4とDDR5の間には互換性がなく、DDR4のスロットにはDDR5は物理的に挿すことができません。
「増設」には相性問題やクロック低下に注意
マザーボードのメモリスロットに空きがある場合、現在使用しているメモリに追加する形で新しいメモリを追加する「増設」が可能です。
ただし、メモリを増設する場合は、新旧メモリの相性問題や、動作可能なメモリクロックの低下と言った問題が生じる可能性があります。
メモリ増設による相性問題は、新旧メモリの仕様が異なることによって生じる問題のことです。メモリモジュールはメモリ基板にメモリチップを搭載したものですが、メーカーの同一型番のメモリモジュールであっても製造時期によって基板やメモリチップは異なるものが採用される場合があります。このような異なる仕様のメモリを組み合わせた際に、メモリコントローラがメモリモジュールを上手く制御できず、動作不良を引き起こすことがあります。
動作可能なメモリクロックが低下するケースは主に2パターンあり、ひとつは異なるクロックスペックのメモリを組み合わせることによる「新旧メモリのクロックスペックが異なる場合」で、もうひとつは「メモリコントローラの仕様」によるものです。
新旧メモリのクロックスペックが異なる場合というのは、例えば現在使用しているメモリがDDR4-2666であるのに対し、新たに購入したメモリがDDR4-3200というようなケースで、このような場合は遅い方のメモリクロックに合わせないと安定しない場合があるので、増設後はDDR4-2666で動作させることになります。
メモリコントローラには、メモリモジュールの枚数が増えると最大対応メモリクロックが下がる仕様のものが存在します。例えば、Ryzen 7000シリーズのCPUが内蔵するDDR5メモリコントローラは、1チャネルに1枚のメモリモジュールまでならDDR5-5200に対応していますが、1チャネルに2枚のメモリモジュールを搭載するとDDR5-3600までの対応となっています。これを超えると絶対に動かないという訳ではありませんが、安定動作の保証はありません。
オーバークロックメモリは「交換」が基本
メモリチップをオーバークロックすることで高クロックや低レイテンシを実現するオーバークロックメモリの場合、メモリ容量を増やす際は「増設」ではなく、「交換」が基本となります。
オーバークロックメモリは、メモリメーカー独自のオーバークロック設定で動作することが確認されたメモリモジュールを組み合わせた「メモリキット」で販売されています。原則として、メモリキットの組み合わせ以外では製品スペックの動作が保証されないため、同じ型番の製品であっても増設を行った場合の動作保証はありません。
増設が不可能という訳ではないのですが、メモリメーカーが独自の設定でオーバークロック動作を実現しているオーバークロックメモリは、JEDECの標準規格に準拠しているスタンダードメモリ以上に相性問題が生じるリスクが高いのが実情です。
オーバークロックメモリを選択される場合は、現状のメモリをすべて取り外し、容量が上のメモリキットへの交換をご検討ください。