自作PCの知識

超大容量電源の使いどころとは?

日本で発売される自作PC向け電源ユニットの多くは1200Wあたりが最大容量となっていますが、製品によっては1300Wや1500W以上といった超大容量電源も存在します。今回はこのような電源ユニットの使いどころはどこにあるのか考えてみましょう。
MSI_1300W
▲MSI MEG Ai1300P PCIE5

日本のAC100Vで使えるのは1200~1350Wあたりが限界

 超大容量電源ユニットの使いどころを考える前に、そもそも国内で入手できる電源ユニットの電源容量が1200Wあたりで上限になっていることが多いのは何故なのでしょうか。

 その答えは、日本の一般家庭におけるコンセントの仕様にあります。

 日本の一般家庭ではコンセントには交流100V(AC100V)が供給されており、コンセントの許容電流は最大でも15Aとなっています。つまり、コンセントから供給できる電力は通常100V×15Aで1500Wが上限となります。

 コンセントから供給される交流(AC)をPC向けの直流(DC)に変換する電源ユニットにおいて、「容量」とは直流に変換した後の出力電力のことですので、電源ユニットの変換効率によって生じる交直変換時のロス分を差し引くと、最大1500Wまでの日本の標準的なコンセントに接続した電源ユニットが出力できる電力は1200~1350Wあたりが限界となるのです。(コンセントから供給された1500Wの電力を変換効率80%で直流に変換した場合の出力が1200W)

 このように、日本における一般家庭のコンセント事情によって電源ユニットの最大出力は1200Wあたりが上限となっていることがほとんどで、中には海外では1600Wや2000W対応として販売されている超大容量電源が1200Wや1350W電源として販売されることもあります。

コンセントの200V化で1500W超の電源ユニットも利用可能に

 では、日本国内ではそもそも1500Wやそれを超える超大容量電源は利用できないのかと言えば、そんなことはありません。日本でも電圧200Vのコンセントを利用すれば、2000Wクラスの電源ユニットでもフルスペックで使用できます。

 AC200V対応のコンセントは一般的とは言えませんが、エアコン用などに200Vコンセントを用意している物件も少なくありません。PC用に使える200Vコンセントが無くても、有資格者による電気工事によって200Vコンセントへの変更や増設が可能です。ただし、個人所有の戸建物件はともかく、集合住宅や賃貸では200V化工事が不可能な場合もあるので注意が必要です。

一般的なPCでの必要性は薄い超大容量電源

 コンセントの200V化というハードルを乗り越えれば、1200Wを超えるような超大容量電源が利用可能となる訳ですが、実のところ一般的なPCで1500Wや2000Wのような超大容量電源が必要となることはほとんどありません。

 IntelのCore i9-14900Kなど最上位級のデスクトップ向けCPUは300~400W、GeForce RTX 4090のOCモデルは450W以上の電力を消費することもありますが、よほど特殊な構成にしない限りは1200W電源で十分に対応できます。

 超大容量電源の使いどころとしては、ゲーム以外での利用を狙ってGeForce RTX 4090を複数枚搭載したり、電力リミットを開放してオーバークロックすると500Wを優に超える大消費電力に達するSapphire Rapids世代のXeonや、サーバー向けCPUのマルチソケット環境など、一般的なPC用途を超えた特殊な環境を構築する場合です。少し前なら、GPUマイニングが典型的な超大容量電源の使いどころでした。

 200Vコンセントを導入しなければフルスペックで利用できず、用意しても特殊な環境以外でそこまでの容量が必要となることがほとんどない超大容量電源は、日本の自作PCユーザーの多くにとって縁遠い存在なのが現状です。ワークステーションの構築に際して超大容量電源の導入を検討されている方は、設置場所のコンセント事情についても事前に確認しておきましょう。

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