パーツの選び方 自作PCの知識

HDDの用途と使い方(2022年3月版)

 最近のHDDは、「デスクトップ向け」や「NAS向け」のように、用途が明示された製品が多くなっています。今回はHDDの用途とPCでの使い方について紹介いたします。

デスクトップ向けHDD

 デスクトップ向けHDDは、その名の通りデスクトップPCでの利用を想定して設計されたHDDで、「Seagate BarraCuda」や「WD Blue」が該当します。

 デスクトップ向けHDDは、もっとも容量単価の安いHDDですので、手ごろな価格で大容量が実現できます。また、比較的新しい製品は回転数が5400rpm前後であるため、騒音や発熱が小さいのも魅力です。

 一方、安い容量単価を実現するため、低回転数なだけでなくSMR記録方式を採用した製品も多く、データ転送速度は遅めです。また、一般的なPCでの利用が前提のデスクトップ向けHDDは、1日あたり6~8時間程度の通電時間を想定して設計されており、耐久性や信頼性、保証年数などは他の用途より劣ります。

 基本的には「データの保管庫」や「バックアップ用」として、速度が求められない用途で使うのに適しています。安価に大容量を実現できるので、複数台用意して多重バックアップをすれば、データを安全に保管できるでしょう。

NAS向けHDD

 NAS向けHDDは、NASで利用することを想定して設計されたHDDで、「Seagate IronWolf」や「WD Red」などが該当します。
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 ▲Western DigitalのNAS用HDD 「WD Red」

 常時稼働が前提となるNAS向けHDDは、24時間365日の連続稼働に耐えられる耐久性と信頼性を備えています。また、RAID構成での利用に適した専用ファームウェアやRVセンサーを採用することで、複数台の同時使用でも安定したパフォーマンスを発揮できるようになっています。なお、上位モデルほど耐久性が高く、同時に使用できるHDDの台数も多くなります。

 耐久性や信頼性に優れ、連続稼働やRAIDでの運用が可能なNAS向けHDDは、PCでの利用でもメリットの多いHDDではありますが、デスクトップ向けHDDに比べかなり高価です。RAIDや多重バックアップのために複数台用意しようとすると結構な金額になります。

監視カメラ向けHDD

 監視カメラ向けHDDは、常時稼働する監視カメラの映像を記録することが目的のHDDで、「Seagate SkyHawk」や「WD Purple」が該当します。

 常時録画を行い続けるように設計されたHDDであるため、24時間365日の連続稼働が可能な耐久性と信頼性が確保されています。また、複数の監視カメラの映像を書き込み続けられるよう、ファームウェアも専用のものが採用されています。

 特性的にはNAS向けHDDに近いものがあり、常時稼働が可能で耐久性や信頼性に優れたHDDとしてPCでも使用することは可能です。ただ、性能的に同等のNAS向けHDDよりも高価な場合も多いのがネックです。

エンタープライズ用HDD

 エンタープライズ用HDDとは、企業が利用するサーバーや大規模NASのように高い信頼性が求められる場所での利用を想定したHDDで、「Seagate Exos」や「WD Gold」が該当します。

 24時間365日の連続稼働は当然として、信頼性に関しても非常に高いスペックが設定されており、NAS向けHDDや監視カメラ向けHDDのMTBFが100~150万時間程度なのに対し、エンタープライズ用のSeagate ExosやWD Goldでは250万時間のMTBFを実現しています。

 HDDの質や性能面では最高級の選択肢となるエンタープライズ用HDDですが、当然ながら他の用途のHDDより割高です。どうしても性能や信頼性が必要というところでのみ使用して、バックアップなどには別のHDDを用いると良いでしょう。

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